インデックス・ウォッチャー

市況をゆるゆると眺めながら、インデックス投資をコアとしたコツコツ資産形成を記録していきます。

「勝者を当てない」投資術

 近頃投資ブログで良く見かけるウォーレン・バフェット氏の書簡について、日経新聞が記事にしていました(電子版では有料会員限定)。

 米著名投資家で「オマハの賢人」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏。経営するバークシャー・ハザウェイの株主に年に一回手紙を送る。3月初旬に同社のホームページで開示された最新の手紙では「普通の人は勝者(上がる株)を当てなくてもいい」と助言した。「銘柄選びのカリスマ」の意外な言葉は、少額投資非課税制度(NISA)などを機に投資を始めようとする投資初心者への重要な示唆だ。

(バフェット氏の助言 「勝者を当てない」投資術 :マネー底流潮流:マネー :日本経済新聞)

 ちなみにこの手紙の現物(バークシャー・ハサウェイ社の2013年年間報告書)はこちらで読めます(本記事に関連する部分"Some Thoughts About Investing"は17-21ページ)。英語ですが無料です。
 本筋とは関係ありませんが、2ページ目にはS&P500に対するバークシャー・ハサウェイの年間リターン比較が掲載されています。これまでの49年(1965-2013年)でS&P500に年間リターンが劣後した年はわずか10年、49年の平均年率リターンはS&P500の9.9%に対して19.7%という超優秀な結果を残しています。
 以下、手紙から私が気になった部分をかいつまんでメモしておきます。


 バフェット氏の投資というと、「現在の株価がその価値に対して割安である企業への投資(バリュー投資)」と「今後の成長が見込める優良企業への投資(グロース投資)」とを掛け合わせた投資スタイル、すなわち「自分たちの見積もりにより長期的な収益の拡大が見込める株が、その価値に対して割安であると判断できた場合に投資を行う」というものと思っています。手紙にも「5年かそれ以上の期間での利益を適切に見積もれて、さらにその価格が見積もった利益の下限に対して合理的な価格で売りに出されている場合に買い入れる(19ページ)」と書かれています。また、「我々に将来の収益を見積もる能力がない場合は、別の銘柄を検討するだけだ(同)」とのことです。

 この収益予測と現在価値判断は非常に難しいことから、「もちろん、大半の投資家は事業の収益見通し調査を生活上の優先事項とはしていない。もし彼らが賢明なら、自分たちが個々の事業において将来の収益力を予測する知識を十分に持っていないと結論づけるだろう(20ページ)」ということになります。もちろん私はこれができない投資家の一人です。

 このような「プロでない投資家」のための投資法提案が、「勝ち組を選択するのではなく、全体として収益を上げそうな事業の集合、例えば低コストなS&P500連動インデックスファンドを保有する(20ページ)」ことであり、「長期間にわたって株式を積み増す(同)」こと、「悪材料で高値から大きく離れても絶対に売らない(同)」ことなのです。これらの「分散」を行い、「コストを最小限に抑えつづける」ことで、「何も知らない投資家であっても望む結果を手に入れられるに違いない。それどころか、自らの短所を自覚している純朴な投資家が、たった1つの欠点に目をつぶる物知りのプロよりも長期では良い結果を残すことになるだろう(同)」という、インデックス投資家としては非常に心強い内容となっています。私もこのようなことを信じて、コツコツ積立を行っているわけです。

 何事も、知ったかぶりをすると後でやけどをするものです。私には、わからないことだらけです。だからこそ、「わかった人が勝てる」集中投資ではなく、「わからなくてもそれなりに勝てる」分散投資を続けていきたいと思います。

 ただし、アメリカでS&P500ならば日本ではTOPIXでよいのかというとそういうわけではありません。ここまでのウォーレン氏の主張は「アメリカ企業の業績は全体として非常に素晴らしかったし、これからもそうだろう(20ページ)」というものに基づいているためです。冒頭のS&P500のリターンも、TOPIX等に対して非常に収益性が高いです。この主張をそのまま日本に置き換えて適用するのは私は難しいと考えていますので、「銘柄」「購入時期」以外に「投資地域」の分散も必要になると思います。
 冒頭に紹介した日経の記事はそのあたりもフォローされた良記事ですので、読める環境にある方はぜひどうぞ。