インデックス・ウォッチャー

市況をゆるゆると眺めながら、インデックス投資をコアとしたコツコツ資産形成を記録していきます。

新規設定ファンドの裏で繰上償還されるファンドもまたあり

 このブログでは、低コストなインデックスファンドETFの新規設定を記事として取り上げることが多いですが、もちろんその逆に淘汰され、繰上償還されていくファンドもあります。たまにはそんなファンドも取り上げてみようかと思います。

 三井住友トラストAMの運用する「4資産インデックスバランスオープン(分配型)<愛称:ベーシック4(分配型)>」および「4資産インデックスバランスオープン(成長型)<愛称:ベーシック4(成長型)>」が、10月27日(火)をもって繰上償還になることが決定したとのことです(発表PDF)。
 2ファンドの違いは分配金の方針のみですので、以降は年1回決算の成長型についてのみ触れていきます。


 このファンド、設定日は2008年3月31日とリーマンショック直前に設定されたものです。このファンドに注目した理由は目標資産配分。日本と先進国における株式・債券、計4資産クラスへの均等配分を基本方針としており、最近ニッセイAMが設定した<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)と同一の、分散投資効果の説明に非常に良く出てくる配分です。私も、投資方針で述べているとおりDC口座における目標アセットアロケーションとして位置づけています。

 そのような、文字通りベーシックなバランスファンドが繰上償還に至ったのは、ファンドの総資産額が2009年の約11億円をピークとして、近年の株高においても減少を続けて現状4億円を割る程度、さらに減少傾向にあるためです。そのような状況になったのはなぜかを推測してみますと、

  • 設定直後のリーマンショックから4年ほど基準価格が低迷し続けた
  • 信託報酬が今となっては必ずしも安いとはいえない(税抜0.65%)*1
  • 設定前や設定直後は販売会社が売り込みをかけていたが、リーマンショックとともに売り込みをやめた

などかと思っています。

 この当時、積立投資などがどの程度浸透していたか、またこのファンドで積立投資がどの程度されていたのかわかりませんが、基準価格が低いときこそ積立をするチャンスであるはずですが、投資を行うのが感情をもつ人間である以上、なかなか考えていたとおりに動くのは難しいことなのかもしれません。こう書いている自分も、いざリーマンショック級の暴落が起きたときに合理的に動けるよう、経済的・心理的な支え*2を用意しておきたいものです。

 また、このファンドの繰上償還をみると、マザーファンドの規模が大きいからといって繰上償還しないとは限らない、ということもいえます。*3
 先ほどの<手数料なし>ファンドと同時期に設定され、目標資産配分も同一となっている三菱UFJ投信のeMAXIS バランス(4資産均等型)も、マザーファンドの規模は十分ですが信託報酬が税抜0.5%と高く敬遠されたためか設定後2ヶ月が経過したにもかかわらず総資産額がわずか800万円と非常に厳しい状況になっています。このままでは早晩繰上償還になってしまいかねず、信託報酬の値下げや販売チャネルの拡充など、テコ入れが望まれます。

 繰上償還は、利益への強制課税やNISA枠の無駄遣いにつながり、移行先のファンドを探す労力等も含め長期投資にとってネガティブなものでしかありません。
 私自身は、より低コストなファンドを応援する意味(とブログネタという観点)で積立ファンドを新しい低コストファンドに移行することも多いですが、一般的には信託報酬や実コストが低いことやマザーファンドの規模以外に、ファンド自身の規模も十分に大きく、総口数が増加傾向にあるなど、繰上償還のリスクが低いと考えられるファンドに投資することをおすすめしたいと改めて思いました。ファンドが消滅しないことや、他の投資家が着実に買い進めていることがわかるということも、暴落時に積立を続ける心理的な支えになるはずですので。

*1:先に挙げた<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)の信託報酬は税抜0.34%と、約半額となっています。

*2:生活防衛資金などはこの意味でも重要です。

*3:マザーファンドの規模が大きければ、運用が効率的になり運用にかかるコストが低下することが期待でき、トラッキングエラー等の低下につながると考えられるためよいことではあります。念のため。