インデックス・ウォッチャー

市況をゆるゆると眺めながら、インデックス投資をコアとしたコツコツ資産形成を記録していきます。

個人型確定拠出年金制度のテコ入れ!

 更新していない間に気になったニュースについて、今更ながら触れてみたいと思います。

 2015年度の税制改正大綱について、厚労省がまとめた資料
資料(PDF)の12ページに「企業年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置」がまとめられています。
 この見出しからはわかりづらいものの、内容は主に個人型確定拠出年金(DC)制度に関するものです。一言でいえば、個人型DCが大きくテコ入れされ、対象者が拡大するとともに資産持ち運びの選択肢が増えます
 以下に個別の内容を引用しながらコメントをしていきたいと思います。

  • 個人型確定拠出年金(個人型DC)への小規模事業主掛金納付制度の創設
    • 企業年金の実施が困難な小規模事業主(従業員100人以下)について、従業員の個人型DCに係る拠出限度額の範囲内で事業主による追加拠出を可能とする。

 現行の企業型DCの場合、事業主が拠出することを基本に、従業員がマッチング拠出することもできる形態ですが、小規模企業の場合は従業員の加入した個人型DCに事業主が拠出できるということになります。
 大綱原文(PDF)によれば事業主が拠出した掛金に対する税制取り扱いは企業型DCと同様にする(従業員側:所得扱いせず、企業側:損金参入、企業側掛金に掛かる積立金は退職年金等積立金に対する法人税【特別法人税】の課税対象)とのことです。
 個人型DCですので小規模事業主が投資教育の実施や口座管理手数料負担等を行う必要がなく、小規模事業主の負担が軽減されるものと思われます。
 ……ただし、今回のような場合計算も複雑になりそうですしそろそろ特別法人税(現在凍結中)は廃止してもらえないものかとは思いますが。

  • 個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入可能範囲の拡大
    • 企業の経営状況や、個人の就労形態又は離転職に左右されずに自助努力を支援する観点から、企業年金加入者(※1)・公務員等共済加入者・第3号被保険者について個人型DCへの加入を可能とする。なお、新規に加入可能となる個人型DCの拠出限度額については、以下の通りとする(※2)。
      • 企業型DC加入者(他の企業年金がない場合) 年額24万円
      • 企業型DC加入者(他の企業年金がある場合) 年額14.4万円
      • 確定給付型年金のみ加入者及び公務員等共済加入者 年額14.4万円
      • 第三号被保険者 年額27.6 万円
      • ※1 企業型DC加入者にあっては、マッチング拠出を行っておらず、個人型DCへの加入を可能とする旨を規約で定める企業の企業年金加入者に限る。
      • ※2 個人型DCへの加入を可能とする旨を規約で定めた場合の企業型DC制度の拠出限度額は、他の企業年金がない場合は年額42 万円、他の企業年金がある場合は年額18.6 万円とする。

 この部分はすでにメディアやブログでも多く紹介されているところです。企業型DCと個人型DCの両方に加入可能となったり、DB制度のみ存在し企業型DCが導入されていない企業の従業員や公務員、専業主婦の方が個人型DCに加入可能となります。
 ただし、企業型DC加入者の場合は規約への明記が必要なためハードルが高めであり、企業型DCと個人型DCの総額は現在と変わらない*1ため、現在マッチング拠出で限度額まで積み立てられている私のような場合は関係ないようです。おそらく会社もわざわざ認めないでしょう。
 それよりは、次の話とも関連しますが転職時にもDCを継続できる可能性が増えるということがありがたいですね。

  • 企業年金等のポータビリティの拡充
    • 就労形態が多様化する中、加入者の選択肢を拡大し、老後所得確保に向けた自助努力の環境を向上させるため、確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)へのポータビリティ(年金資産の持ち運びを可能とすること)、及びDC・DBと中小企業退職金共済とのポータビリティ(事業再編による合併等を行った場合に限る。)を拡充。

 そしてこちらはDCからDBへの移行を認めるという内容で、これも転職時の選択肢が増えることになります。これだけポータビリティが確保されれば、DCの積み増しも解約もできない運用指図者となってしまい手数料分ジリ貧となる展開はかなり少なくなるのではないでしょうか。
 私としては非常にありがたい方向性です。

  • 確定拠出年金(DC)の拠出限度額の年単位化
    • 月単位で設定されているDCの拠出限度額を年単位とする。

 最後は、掛金のボーナス時増額等が可能となるということかと思います。個人的には月ごとに同じ金額を拠出したいので現行のままで問題はありませんが、制度の柔軟性という意味では大切かと。

 以上、ざっと改正内容を確認しましたが、基本的に歓迎すべき方向と思いますのでこのまま法律改正等が進むことを願います。何度でもいいますが特別法人税は廃止してもらいたいところですけどね。

*1:他の企業年金がない場合:年額66万円、他の企業年金がある場合:年額33万円