インデックス・ウォッチャー

市況をゆるゆると眺めながら、インデックス投資をコアとしたコツコツ資産形成を記録していきます。

「アクティブな」インデックスファンドはWelcome、「パッシブな」アクティブファンドはNo!

 昨日の記事にて紹介したRussell/Nomura ファンダメンタル・プライム・インデックスや、投信・ETFの設定などを追いかけていたJPX日経400など、一口に「インデックス」といっても様々なものがあります。今回はこれらの少し変わったインデックスについて、もう少し深く考えてみたいと思います。


 Russell/Nomura ファンダメンタル・プライム・インデックスでは組み入れ基準として売上・営業キャッシュフロー・配当金の3要素、JPX日経400ではROE・営業利益・時価総額の3要素をあげており、東証一部上場全銘柄の時価総額比であるTOPIXとは異なる値動きをする、特にパフォーマンス面でTOPIXを上回るのではと注目されています。
 このような、時価総額を基準とせず付加価値(ハイリターン、ハイシャープレシオ、ローリスクなど)の付与を狙って算出されるインデックスのことを近頃「スマートベータ」などと呼ぶようです*1。この点、日経225ダウ・ジョーンズは全く時価総額比ではない(株価基準)ものの、市場全体の動きをとらえるのが目的のインデックスといえるのでスマートベータとは呼びません。

 時価総額加重によるインデックスに連動する投信やETFを購入するということは、ざっくりと言うと「対象市場全体のミニチュアを持つ」ということになると思いますが、スマートベータに連動する投信・ETFを購入する場合は指数がふるいのような役割を果たします。一定基準に満たない銘柄、言ってしまえば「ダメ株」はふるいにかけられ取り除かれるわけです。
 その結果、良くも悪くも「ダメ株」の影響が除外されます。市況・業界全体に逆行して経営状況が悪く、株価もさえない銘柄を除外できているかもしれません。反面、そのような銘柄が爆発的に伸びた場合でもその効果を享受できないかもしれません。このような銘柄選定によって、時価総額加重インデックスとはリスク(標準偏差)が変化しますが、このリスクの差分は通常「アクティブリスク」と呼ばれます。スマートベータは「アクティブな」インデックスというわけです。TOPIXのようなものは「パッシブな」インデックスと呼べるでしょう。

 このあたりで、一つ疑問が生まれます。
 スマートベータ連動投信・ETFと、いわゆるアクティブファンドの違いはあるのか? ということです。

 スマートベータはあくまでインデックスですので、銘柄組み入れや組み入れ比率などにルールがあり、そのルールが公開されています。投信の運用会社はインデックスに連動できるよう、インデックスに近いポートフォリオを持っておけばよく、アクティブファンドの信託報酬が高い理由としてよく挙げられる個別銘柄の調査を行う必要がないため信託報酬は抑えられます*2
 反面、ルールが決まっている以上パフォーマンスが悪くてもそれに合わせて柔軟に銘柄を入れ替えるようなことはできません。よいアクティブファンドならば、パフォーマンスが悪ければファンドマネージャーがどうにかしようと策をとってくれるかもしれませんが、そのようなことはスマートベータではしづらいということになります。
 また、指数の継続性が失われるような極端なルール(銘柄数があまりにも少ない、総入れ替えが発生するなど)を導入することもないでしょうから、銘柄数を絞って一点集中にて勝負! といったことはアクティブファンドが得意でしょう。

 これらから、スマートベータ連動ファンドはパッシブインデックス連動ファンド(アクティブリスク0)とアクティブファンドの間のアクティブリスクをとるようになると考えられます。
 逆に、アクティブファンドなのにアクティブリスクが低いと、「それならコストも安いしJPX日経400連動ファンドでいいんじゃない?」などと言われかねない状況になります。こういう「パッシブな」アクティブファンドには退場願いたいところです。
 アクティブファンドに真に求められるのは、インデックスでは対応できない柔軟さや先見性など、ある意味人間らしい部分ということになると思います。これができるファンドマネージャーこそ一流と呼ばれるのでしょう。

 インデックスはパッシブなものだけではなく、むしろアクティブなものもあり、低コストな投資の幅を拡げてくれます。また、(真の意味での)アクティブファンドが存在するからこそ市場の多様性・効率性が保たれるともいえます。
 「アクティブな」インデックスファンドは、その特性を理解して使いこなせばよい投資ツールになると思っています。「アクティブな」アクティブファンドも、その個性の源を理解した上で投資するのであればすばらしい投資になり得るでしょう。
 ただ、「パッシブな」アクティブファンドがコストのみを他のアクティブファンドと同水準に徴収していくというのはいただけません。そのあたりを見極めるためにも、投資対象の選択はしっかり行いたいものです。

*1:JPX日経400の場合、本指数に組み入れられるようなROE重視の経営を促す意味もあるため「付加価値を目指している」とまでいえるかは微妙ですが、本記事ではスマートベータとしておきます。

*2:スマートベータは定期的に銘柄入れ替えがあることが多く、その点で時価総額加重インデックス連動よりはコスト高になる可能性が高くなります。